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BARで学ぶリアルマーケティング
第20話|体制と役割ってどう決める?デジタルマーケプロジェクト手順

はじめから読む▶︎第1話:自己紹介
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こんばんは、今日もマーケティングの考え方を一緒に整理していきましょう。
今回のテーマは、デジタル業務が社長ひとりに集中しがちな中小企業で、 体制と役割をどう整理し、“会社全体のプロジェクト”として前に進めるか。
現実的な進め方を、ある二代目社長のエピソードとともに紐解いていきます。
舞台は、宮崎市で祖父の代から続く生花店。
葬儀やブライダル、法人向けの定期装花まで手がける、地域ではおなじみのお店です。
その二代目として現場を率いる女性社長の悩みを、バーテンダー叶あかりがレクチャーします。
社長:「あかりさん、ちょっと限界かもしれない……」
あかり:「お花の仕入れが高くなっちゃった?」
社長:「それはそれで悩みなんだけど(笑)、
今一番しんどいのは“デジタル”の方で。
InstagramもECサイトもニュースレターも、
全部私が企画して、写真撮って、文章書いて、数字まで見てて…。
社内で分かる人がいないから、“デジタル担当=社長”になってしまっていて。」
そう悩みを打ち明けてくれた社長さん。
押さえるべきポイント
あかり:「まずは、今日お話しするポイントをざっくり整理するわね。
✔️デジタルマーケティングをプロジェクトとして設計するときの考え方
✔️社内の体制と役割を整理し、社長ひとりに業務が集中してしまう状態から抜け出す方法
✔️部門をまたいだチームと、代理店を含めた連携のつくり方
✔️それぞれのメンバーにどんな役割分担やスキルが必要か
✔️ツールや外部パートナーを「外部の右腕」として導入・活用し、全体を管理しやすくするコツ
社長だからこそ見える現場の違いや、先代とのやり方の違いを踏まえながら、
デジタル施策を成功させるための「現実的な体制づくり」を一緒に考えていきましょう。」
社長:「ありがとう。心強いよ」
キーワードは「サイロ化」と「役割整理」
あかり:「じゃあ、一度、社長がやっている業務を全部書き出してみて」
社長:「えっと……
・Instagramの撮影〜投稿〜コメント返し
・ブライダルフェアのLP企画
・葬儀会社向けの提案資料づくり
・Googleビジネスプロフィールの更新
・ECサイトのキャンペーン企画
・月次の売上とアクセスの集計
それに、父の代からの取引先への挨拶回りもあるね」
あかり:「うん、それはもう完全に“ひとり分の仕事量”を超えてるわね」
社長:「でも社内に詳しい人がいないから、“仕方ないか”で流してしまっていて…」
あかり:「実は、“人がいない”以前に、
『役割が整理されていない』ことと『サイロ化』という二つの問題が隠れているの」
社長:「サイロ化……?」
あかり:「“サイロ”は穀物を貯蔵するタンクのことだけど、
ビジネスでは『部署ごと・人ごとに情報が閉じて、つながらなくなっている状態』を指すの。
たとえば、こういう感じ♡」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
・店舗は「若いお客さんが増えてきた」と感じている
・葬儀担当は「会場からの紹介案件が減ってきた」と感じている
・経理は「売上は伸びているが、どの商品が伸びているかまでは見えていない
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あかり:「それぞれの現場では多くの情報や経験があるのに、
その情報が全体としてつながっていない。
全体像を整理する“ハブ役”がいないと、
どの施策が効いていて、どこを改善すべきかが分からないまま、作業だけ増えてしまうのよね。
結果として、あちこちからバラバラの相談が社長に集まり、
「全部自分で判断してしまう」体制になりがなの。
デジタルマーケティングを前に進めるには、
サイロ化した情報をつなぐ“ハブ”をつくること
その上で、誰がどんな役割を持つのかをはっきりさせること
この二つがとても重要になるのよ」
最初の一歩は「社内の関係者マップ」
あかり:「いきなり新しい部署を作る必要はないの。
まずは、“この会社には、どんな関係者がいるか”を書き出してみましょう」
私は紙ナプキンに、さらさらとペンを走らせます。
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⚫︎経営:社長・会長(お父様)
⚫︎店舗スタッフ
⚫︎ブライダル担当
⚫︎葬儀担当
⚫︎法人営業
⚫︎経理・総務
⚫︎広告や印刷をお願いしている外部パートナー
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あかり:「ここに、それぞれの役割を書き込んでいくわね」
- お客様の声や写真を集める … 店舗スタッフ・ブライダル担当
- 葬儀会場ごとの事情を把握する … 葬儀担当・会長
- 売上・粗利の数字を整理する … 経理
- デジタルの全体方針と最終判断 … 社長

社長:「こうやって見ると、“社長じゃなくてもできること”が結構あるね」
あかり:「そうなの。
Instagram用の写真はスタッフ、粗利の計算は経理、
会場との関係性は会長──といった具合に、
役割分担さえ決めれば、社長の業務はだいぶ減らせるわ。
社長が担うべきなのは、
『全体の方向性を決めること』と『最後のジャッジ』くらい。
それ以外の作業を誰に任せるかをはっきりさせることが、
デジタルマーケティング体制づくりの必要最低限のスタートラインなのよ」
デジタルマーケティングの第一歩は、
新しいツールを導入することでも、高度な機能を使いこなすことでもなく、
「この会社で、誰がどの役割を担い、
サイロ化しがちな情報をどうつないでいくか」
を整理すること。
とくに二代目の経営者には、
先代が一人で抱えていた仕事を分解し、
「みんなの役割」として再設計するプロジェクトを主導することが求められるの。
二代目だからこそできる「部門横断チーム」づくり
社長:「でも、うちは十数人の小さな会社で、部署もあいまいなんだよね」
あかり:「むしろ、その規模だからこそ“部門横断チーム”は作りやすいのよ」
私はさっきの関係者マップに、丸をいくつか書き足します。
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⚫︎チームリーダー:社長
⚫︎メンバー:店舗リーダー、ブライダル担当、葬儀担当、経理、
⚫︎そして既存の広告代理店の担当者
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あかり:「月に1回、30分でいいので、
“今月の結果と、来月やること”を話すミーティングを行うイメージね」
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- どの投稿で問い合わせが増えたか
- どの式場からの引き合いが増えているか
- どの商品がよく売れて、どれが滞っているのか
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社長:「たしかに、現場の感覚と数字をつなぐ場が、今はまったくないね」
あかり:「大企業だと“CoE(Center of Excellence)”なんて
かっこいい名前の体制を作ったりするけど、
中小企業なら“月イチマーケ会議”ぐらいの感覚で十分。
大事なのは、デジタルを
『社長ひとりの特別な業務』ではなく、
『会社全体のプロジェクト』として扱うことなの」
ここでのポイントは、
チーム単位で情報共有を行うこと
メンバーそれぞれに「このテーマならこの人」という担当をはっきりさせること
経営と現場、代理店との連携を、定期的な場で管理すること
この3つです。
日々のコミュニケーションで「相談先マップ」をつくる
あかり:「二代目の方からよく聞くのが、
“頼れる人はいるのに、誰にどこまで相談していいか分からない”という悩みなの」
社長:「すごく分かるよ。
全部自分で判断した方が早い気がして、結局抱え込んでしまうんだよね」
あかり:「だからこそ、“このテーマならこの人”を決めておくのが重要なの」
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- 価格や利益率 … まず経理と相談
- 葬儀会場との関係性 … 会長
- ブライダルのトレンド … 担当スタッフ
- 広告やサイトの仕様・機能 … 代理店・制作会社
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こうした「相談先マップ」があると、
社長の頭の中だけにあった情報が、チーム全体に流れ始めるの。
社長:「今は全部、いったん私で止まってるのよね……。
“なんでも社長に聞く文化”が、逆にスピードを落としているのかも」
あかり:「うん。だからこそ二代目のあなたが
相談先を整理して、メンバー同士が直接連携できるようにしてあげる。
それだけで、プロジェクト全体の動きはかなり変わるわよ」
人材が足りないところは、代理店を「外部の右腕」に
社長:「とはいえ、広告運用とかアクセス解析とか、
専門的な部分は社内ではどうにもならない気がして…」
あかり:「そこは、無理に自前で抱え込まなくて大丈夫♡
人やスキルや経験が足りない領域は、代理店や制作会社に業務委託してしまいましょ」
ただし、ポイントは「丸投げしないこと」。
あかり:「代理店を選ぶときは、こんなところを意識してみて」
┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈┈
- 宮崎や地方中小企業の案件実績があるか
- 実際に担当してくれる“人”と価値観が合いそうか
- レポートが“報告”で終わらず、“次に何を行うか”まで提案してくれるか
- 社長だけでなく、社内メンバーともちゃんとコミュニケーションを取ってくれるか
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さらに、簡単でいいから「RFP(提案依頼メモ)」を用意しておくと、
プロジェクトの目的や体制のイメージが伝わりやすくなるわよ。
目的:葬儀・ブライダル向け法人顧客を増やしたい
期間:まずは半年
予算:月◯万円まで
自社で対応可能な作業:写真撮影、記事のたたき台作成 など
社長:「ここまで整理して渡せれば、相手も動きやすそうね」
あかり:「そう。代理店は“穴埋め要員”ではなく、
社内では補いきれない専門性を持った“外部の右腕”。
社長がやるべきなのは、
どこまでを自社で行うか
どこからを外部に任せるか
どういう体制で日々サポートしてもらうか
をはっきり決めて、全体を管理することなの」

グラスの氷が静かに音を立てたころ、社長の表情が少し和らぎました。
社長:「正直、デジタルマーケティングは“自分が頑張るしかない”と思ってた。
でも、体制と役割を整理して、相談相手と外部パートナーを決めていけば、
“社長ひとりの業務”じゃなくせるんだね」
あかり:「うん、その気づきとても重要ね♡
デジタルマーケティングを前に進めるカギは、
・各組織、人の役割と役割分担を整理すること
・日々のコミュニケーションで“相談先マップ”をつくり、情報のサイロ化を防ぐこと
・足りないスキルや経験は、代理店への業務委託やツール導入も前提に、プロジェクト全体の体制を設計すること
この3つを、二代目のあなたが主導して整えていくことなの」
社長:「まずは、社内と取引先の関係者マップをつくってみるわ。
次に来たときには、“月イチマーケ会議”の報告ができるようにするわね」
あかり:「楽しみにしてるわ♡
その頃にはきっと、“ひとりで抱え込んでしまう感じ”は、今よりずっと軽くなっているはず」
デジタルの知識だけで勝負するのではなく、
体制と役割を整え、チームで連携するプロジェクトとしてデジタルマーケティングを設計する方が、
中小企業にとっては現実的で、長く続けやすい成功への近道です。
それじゃ、今夜もあなたのビジネスにちょっと効く『マーケティングの一杯』を。
叶 あかり
✅ まとめ
- デジタルマーケティングは、社長ひとりの頑張りではなく「会社全体のプロジェクト」として設計することが重要。
- 最初の一歩は、関係者マップをつくり、体制と役割・役割分担を整理すること。
- 月1回程度、部門横断チームで情報を共有し、サイロ化を防ぎながら全体を管理する。
- 足りないスキル・経験・作業は、代理店など外部パートナーのサポートやツール導入で補う。
- 「誰が・何を・どこまで行うのか」を明確にすることで、デジタル施策を継続可能な形で成功に近づけていくことができる。
💡FAQ
Q1. 社員数が少なくても、体制づくりは必要?
A. 必要。人数が少ないほど業務が一人に集中しやすいため、「このプロジェクトでは誰が何を担当するか」を最低限決めておくだけでも、全体の管理がぐっと楽に。
Q2. デジタルに詳しい人が社内にいない場合、何から始めれば良い?
A. まず関係者マップと役割分担を整理し、「ネタを集める人」「投稿などの作業を行う人」「結果をざっくり見る人」に分けるところから始める。
専門的な分析や広告運用は、代理店など外部のサポートを検討する。
Q3. 代理店に任せる範囲は、どう決めれば良い?
A. 「目的・期間・予算・自社で対応可能な業務」の4点を書き出し、自社でやる方が良い部分と、外部に任せた方が効率的な部分の違いを整理してから依頼するとスムーズ。
Q4. チームメンバーには、どの程度のデジタルスキルが必要?
A. 全員が高いデジタルスキルを持つ必要はない。
「現場を知っている」「数字に強い」「文章が書ける」「調整が得意」など、それぞれの強みに応じて役割を分け、足りない機能だけツールや代理店で補う考え方で十分。
「売上を伸ばしたいけど、どこから手をつければ、、」
そんなお悩みをお持ちの方、貴社に最適なマーケティング戦略をご提案します。
小さなご相談からでも、お気軽にどうぞ。
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■ 次回予告|“高機能”より“回る”を買うデジタルマーケティングツール選定〜中小企業の選び方と比較表・運用ポイント〜
第21話は、「高機能ツールを入れたのに、現場が止まった」
——その失敗、実はよくあります。
次回は、デジタルマーケティングツール選定のお悩みについて紐解く回。
成果を左右するのは機能ではなく“PDCAが回る運用”。
選び方の5つの基準と、提案に流されない比較表の作り方をまとめます。
次回もお楽しみに。
架空のBAR「月灯り」で働くバーテンダー叶あかりが
シェイカー片手に、あなたのビジネスに効く”処方箋”を調合します。
=叶 あかり=
会員制BAR『月灯り』6年目/好きな酒は山崎18年・木挽BLUE/
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ハナビヤ広報室