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遠山貴一のひとりごと
原価計算のDX、3回やり直した話
前回の記事で、ショートレビューで部門別会計を求められた話を書いた。
間接費を案件ごとに見たら「え!? これしか残らないの!?」と驚いた、あの話だ。
でも部門別会計をやるには、そもそも原価計算の仕組みがないと話にならない。
うちの原価計算の歴史は、失敗の連続だった。
最初はエクセル。外注費しか見てなかった
最初はエクセルだった。
案件ごとに外注費がいくらかかったか。それくらいしか原価計算していなかった。
社内の人件費? 工数管理? そんなの計算してなかった。外注に出した分だけ引いて、残りが粗利。以上!
今思うとめちゃくちゃだけど、当時はそれで困ってなかった。売上は伸びてたし、赤字にもなっていなかった。だから「まあいいか」で何年もやっていた。
でも、前からずっと思ってはいた。原価計算をもっとちゃんとやりたい、と。案件ごとにどれくらい利益が出ているのか、ちゃんと見たかった。見たかったけど、やり方がわからなかった。
友人の建築会社にkintoneで作ってもらった
ショートレビューで部門別会計が必要だと指摘されて、ようやく本腰を入れた。
まずkintoneで原価計算の仕組みを作ることにした。友人が経営している河北という建築会社があるのだが、この会社がDXにめちゃくちゃ長けている。kintoneのカスタマイズを自社でやっていて、そこにお願いした。
建築会社にシステム作ってもらう広告会社。なかなか面白い構図だと思う。
見積から請求までの原価計算ができるシステムを作ってもらった。河北にはすごく感謝している。おかげで原価計算の第一歩を踏み出せた。
でも、使っていくうちに、うちの業態の複雑さに追いつかなくなってきた。
部門ごとに全部違う。それが問題だった
うちは動画、デザイン、Web、マーケティング、Web広告の運用、タレントと部門がある。
で、これが全部違う。見積もりの出し方も違えば、粗利率も違う。案件にかかる工数も部門ごとにバラバラだ。
動画案件とWeb広告の運用案件では、原価の構造がまるで違う。それを一つのシステムで管理しようとすると、どうしても無理が出てくる。
kintoneは案件管理としては優秀だった。でも、これだけ部門ごとに構造が違う原価計算を細かく回すには、もっと専門的なツールが必要だった。会社のフェーズが変わって、求めるものが変わったということだと思う。
社員の一言でZACにたどり着いた
kintoneでは厳しいなと感じていた時、社員が「前職ではこんなシステム使ってました」とZACを教えてくれた。
ZACは、案件ごとの原価計算や工数管理ができるシステムだ。広告業界みたいなプロジェクト型のビジネスに向いている。
調べてみたら「これだ!」となった。導入を決めて、設定やカスタマイズに苦労しながら立ち上げた。
今はZACで案件ごとの利益、クリエイターの工数管理、部門別の利益計画が出せるようになった。ショートレビューで求められた部門別会計に対応するための武器が、ようやく揃った。
社員の一言がきっかけだったのが面白い。経営者だけで全部見えるわけじゃない。現場にいる人間の方が、現場に合うツールを知っている。
エクセル→kintone→ZAC。3回やり直した
振り返ると、原価計算のDXはエクセル→kintone→ZACと3段階で変わってきた。
最初からZACにたどり着けたわけじゃない。エクセルで限界を感じて、友人の会社にkintoneで作ってもらって、それでも会社のフェーズに合わなくなって、社員の一言でZACにたどり着いた。
DXって、一発で正解にたどり着くものじゃない。失敗して、やり直して、ようやく形になる。
「最初から正しいツールを選べ」なんて、後から言えることでしかない。その時の会社の規模、やりたいこと、現場のリテラシーに合ったものを選ぶしかない。そしてフェーズが変われば、ツールも変わる。
DXは「何回やり直せるか」だと思う
「せっかく作ってもらったのに」と思うこともある。河北に作ってもらったkintoneのシステム、申し訳ない気持ちもあった。
でも、合わなくなったツールにしがみつく方が危ない。乗り換える判断を早くできるかどうかが、小さい会社のDXでは大事だと思う。
中小企業のDXは「正解のツールを選ぶ」ことじゃなくて、「今の自分たちに合うものを選んで、合わなくなったら変える」ことだ。
完璧なツールを最初から選ぼうとして動けないより、とりあえずやってみて、ダメだったら変える。その方がよっぽど前に進める。
AUTHOR
遠山貴一
宮崎でクリエイティブの会社をやっているハナビヤ代表。 この連載は、「会社運営や経営するリアル」を記録した実践日記です。