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遠山貴一のひとりごと
規程が全部「無」だった
ショートレビューの報告書のPDFをスクロールしていたら、一覧表が出てきた。
規程の一覧表だ。
経理規程、業務分掌規程、稟議規程、販売管理規程、原価計算規程、予算管理規程。重要度◎のものがずらっと並んでいる。
で、その横のステータスが、ほぼ全部「無」。
無、無、無、無、無。
いやいやいや。
うちの稟議、チャットの報告だったんだけど
正直に言うと、「規程がない」以前の話で、何の規程が必要なのかすら知らなかった。
経理規程ってなに。業務分掌規程ってなに。稟議規程に至っては、うちの稟議ってチャットで「これ買います!」「OK!」のやりとりだった。それが稟議だと思ってた。
ショートレビューを受ける前は、規程という存在自体を意識していなかった。会社にルールブックがないことを、問題だと思ったことがなかった。だってなくても回ってたから。
一覧表を見て初めて「あ、こんなにあるんだ」と思った。しかも全部◎。重要。早期対応。
え、全部?
聞けば済む。それで10年やってきた
なんで今まで規程がなくても平気だったのか。
簡単な話で、社員同士で直接聞けば済んでたからだ。
「これどうすればいい?」「あぁ、それは〇〇さんに聞いて」「了解」。それで回っていた。経理のことは経理の人に聞く。制作の進め方は先輩に聞く。判断が必要なことは僕に聞く。ルールブックなんかなくても、聞けばわかる。
実際、売上も伸びてたし、大きなトラブルも起きなかった。「うちはこのやり方で回ってるから大丈夫」と本気で思っていた。
でもそれって、たまたまうまくいってただけだった。
あのデータどこにありますか?……わかりません
実は一度、ヒヤッとしたことがある。
人の入れ替わりがあった時のこと。「あのデータってどこにありますか?」と聞いたら、「それ、前任者がやってたんでわからないですね。ちょっと調べてみます」と返ってきた。
調べてみます、と言われたものの、結局その人の頭の中にしかなかった情報だった。なんとか手探りでやり直して、その時はなんとなくできた。
「なんとなくできた」で済んでたのが怖い。
聞けば済む会社は、聞く相手がいなくなった瞬間に止まる。ノリと信頼で回っていたんじゃなくて、特定の人に依存していただけだった。属人性が高い。これはやばいなと思った。
ノリで回る会社の天井
ショートレビューの一覧表を見て思ったのは、「うちの会社、丸裸じゃん」ということだった。
ルールがない。基準がない。誰が何を決めていいかも、文書になっていない。今まではそれでよかった。少人数で、顔が見える距離で、直接聞けば済む。
でも、ノリで回る会社には天井がある。
規程を作るというのは、「なんとなく」を全部言語化するということだ。めんどくさい。正直、売上を作る方がやりたい。でも、ここを避けたら上場はできない。
上場のために社員の給料上げれなかったら本末転倒じゃん
じゃあすぐ全部作ったかというと、作れていない。
理由はシンプルだ。上場を維持するには膨大なコストがかかる。規程を整えて、体制を作って、人を増やして。全部やったら利益が飛ぶ。
上場することが先走って、利益を削って、社員の給料を上げられなかったら本末転倒じゃん。
そもそも何のために上場するのかって話だ。社員にちゃんと返したいから上場するのに、上場準備のせいで給料上げられませんって、意味がわからない。
だから、規程よりも先に稼ぐ力を作ることを選んだ。まず利益をしっかり確保する。その上で、体制を整えていく。順番を間違えたくなかった。
今は一部の規程から少しずつ作り始めている。全部一気にはできない。でも「無、無、無」の状態からは動き出した。
ノリで回してきた会社を、ルールで回る会社に変える。それが上場への最初の一歩だと思っている。
AUTHOR
遠山貴一
宮崎でクリエイティブの会社をやっているハナビヤ代表。 この連載は、「会社運営や経営するリアル」を記録した実践日記です。